ドイツ海軍戦記 [ドイツ海軍]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
C.D.ベッカー著の「ドイツ海軍戦記」を再度読破しました。
原著は1955年発刊という古いものですが、朝日ソノラマらしい読みやすい一冊の紹介です。
ここのところ「仮装巡洋艦」が出てくるものを2冊読破したこともあり、
結構前に読んだ本書を読み返してみました。
ひょっとしたら、初めて読んだドイツ海軍モノだったかも知れません。
本書はポケット戦艦「アドミラル・シェア」の艦長をはじめ、連合軍のノルマンディ上陸当時、
西部方面の海軍司令官も務めたテオドール・クランケ提督も携わっているようです。
終戦から半年も過ぎた1945年のクリスマス。数少ない生き残りのドイツ艦、
軽巡「ニュルンベルク」が英国兵監視の元、ソ連側へ引き渡される話から始まります。
艦長ギースラー大佐を中心に、ラトヴィアの港まで無事に航行するこのプロローグは
既に英ソ関係の方が怪しいなか、3ヶ国の海の男たちには、笑顔があります。
ドイツ海軍(クリークス・マリーネ)の誇る、有名な戦艦、ビスマルクやティルピッツ、
ポケット戦艦のシュペー号、ブレスト艦隊のドーバー海峡突破などの話は
当然のように出てきますが、これらはドイツ海軍戦記として以前に
「呪われた海」と「ヒトラーの戦艦」を紹介していますので
実は本書の裏の主役である地味な艦隊をここでは紹介してみます。
1943年11月、クリミア半島奪還を目指し、橋頭堡を築いたソ連軍を食い止めるため
黒海のケルチ海峡では、艦隊と呼ぶのも恥ずかしい貧弱な
Rボート(掃海艇)とSボート(高速魚雷艇)を中心とした「ドイツ黒海艦隊」が
10倍もの戦力差のあるソ連艦隊に挑みます。
第3掃海隊は、海峡の機雷による封鎖を試みるものの、
橋頭堡に物資を届けるため、夜間にありとあらゆる船舶で海峡を渡るソ連艦船に
Rボートが攻撃を仕掛けます。
目と鼻の先、10mを横切る、拳銃の射程内での敵味方入り乱れる海上の白兵戦・・。
かつての海戦を彷彿とさせるこの戦いは、速力と操縦性に優るドイツ艦隊に軍配があがります。
しかし翌日の夜、長射程で一挙にカタをつけるべく、ソ連艦隊は大型の砲艦で待ち伏せます。
コレを見たドイツ艦隊はソ連砲艦に全速力で突撃。
甲板面より俯角をつけられず、せっかく陸軍から借り受けた”カチューシャ”ロケット砲も
手も届くほどの近距離の相手に浴びせることも出来ないソ連艦隊は
逆にドイツ艦艇が接近して投げ込む機雷攻撃の前になす術なし・・。
見事、ケルチ海峡の制海権を取り戻し、ドイツ軍は補給不足となったソ連軍を
クリミア半島の橋頭堡から追い出すことに成功します。
その後のソ連の猛攻により、クリミアから撤退する第3掃海隊800名が
ブルガリア、ユーゴスラヴィアという既に危険となった国々を陸路横断し、
本国へと向かう最後まで描かれていて、本書のなかでも最も楽しめました。
ちなみにSボート(Schnellboot)は一般的には(本書でも)Eボートと言われますが、
これは特に英仏海峡を巡回していたドイツ艦艇を英海軍が"Enemy boat"と
呼んでいたことに起因しているようです。
ノルマンディ沖に現れた連合軍の大船団に立ち向かうのも、
たった3隻の水雷艇(Torpedoboot)です。
指揮艦T-28を筆頭に英戦艦ウォースパイトめがけて突進しますが、
ウォースパイトは一向に攻撃してくる気配はなし・・。
訝しがる水雷艇の砲術士官に「おかしくって撃てないんだろ」と誰かが一言。。。
このような自暴自棄の悲しいジョークはベルリン攻防戦にも確かありましたね。
路上に築かれたバリケードを突破するのにソ連軍は30分の時間を費やす、というジョークで
「みんなで大笑いするのに25分、戦車で吹き飛ばすのに5分・・」。
やっぱり幽霊船とも言われた補助巡洋艦(仮装巡洋艦)も1章割かれていて
1940年に初めて海洋に乗り出したアトランティスから、「捕虜」にも登場した
コルモラーン、その他初めて聞いた名前のオリオンやコメットなど・・。
この章では夜間戦闘機を搭載した最後の幽霊船、コロネルの1943年の任務が描かれますが、
「帰れなかったドイツ兵」のトール(トオル)の名もチラッと出てきました。
1944年のクールラント・・。ソ連の大攻勢に押されっぱなしで追い詰められたドイツ軍を
プリンツ・オイゲンやアドミラル・シェア、アドミラル・ヒッパーが正確無比な艦砲射撃で援護します。
後にグディニア港では無事に撤退した陸軍兵が海軍兵を見つけては「ありがとう・・」。
陸軍参謀総長グデーリアンがデーニッツに送った海軍に対する感謝の言葉も紹介されています。
まるでドイツ版ダンケルクとでもいうような撤退作戦も
東バルト海の司令官ティール提督を中心に紹介され、
このバルト海を巡る最後の攻防は終戦まで続きます。
もちろんUボート話もいくつか紹介されており、小型Uボートのゼーフントやネガー、
新型Uボートに乗るU-2511のシュネー艦長が終戦に伴い降伏し、
英提督らとの尋問に対して自信満々に答える勇姿まで・・・。
まぁ、肩の凝らない気軽に楽しめるドイツ海軍戦記で、戦艦から仮装巡洋艦、
Uボートに水雷艇の活躍までをありがちな悲惨な終焉ではなく、
逆にユーモアと尊敬を交えて、連合国側とも接した逸話を盛り込んでいます。
また、怪しい・・と思っていま、調べてみたところ、著者のC.D.ベッカーは
やはり「呪われた海」の著者であるカーユス・ベッカーのようですね。
300ページの本書は、初めてドイツ海軍モノを読んでみようという方や、
パウル・カレルような戦記がお好きな方にも、息抜きがてらにオススメできる一冊です。
C.D.ベッカー著の「ドイツ海軍戦記」を再度読破しました。
原著は1955年発刊という古いものですが、朝日ソノラマらしい読みやすい一冊の紹介です。
ここのところ「仮装巡洋艦」が出てくるものを2冊読破したこともあり、
結構前に読んだ本書を読み返してみました。
ひょっとしたら、初めて読んだドイツ海軍モノだったかも知れません。
本書はポケット戦艦「アドミラル・シェア」の艦長をはじめ、連合軍のノルマンディ上陸当時、
西部方面の海軍司令官も務めたテオドール・クランケ提督も携わっているようです。
終戦から半年も過ぎた1945年のクリスマス。数少ない生き残りのドイツ艦、
軽巡「ニュルンベルク」が英国兵監視の元、ソ連側へ引き渡される話から始まります。
艦長ギースラー大佐を中心に、ラトヴィアの港まで無事に航行するこのプロローグは
既に英ソ関係の方が怪しいなか、3ヶ国の海の男たちには、笑顔があります。
ドイツ海軍(クリークス・マリーネ)の誇る、有名な戦艦、ビスマルクやティルピッツ、
ポケット戦艦のシュペー号、ブレスト艦隊のドーバー海峡突破などの話は
当然のように出てきますが、これらはドイツ海軍戦記として以前に
「呪われた海」と「ヒトラーの戦艦」を紹介していますので
実は本書の裏の主役である地味な艦隊をここでは紹介してみます。
1943年11月、クリミア半島奪還を目指し、橋頭堡を築いたソ連軍を食い止めるため
黒海のケルチ海峡では、艦隊と呼ぶのも恥ずかしい貧弱な
Rボート(掃海艇)とSボート(高速魚雷艇)を中心とした「ドイツ黒海艦隊」が
10倍もの戦力差のあるソ連艦隊に挑みます。
第3掃海隊は、海峡の機雷による封鎖を試みるものの、
橋頭堡に物資を届けるため、夜間にありとあらゆる船舶で海峡を渡るソ連艦船に
Rボートが攻撃を仕掛けます。
目と鼻の先、10mを横切る、拳銃の射程内での敵味方入り乱れる海上の白兵戦・・。
かつての海戦を彷彿とさせるこの戦いは、速力と操縦性に優るドイツ艦隊に軍配があがります。
しかし翌日の夜、長射程で一挙にカタをつけるべく、ソ連艦隊は大型の砲艦で待ち伏せます。
コレを見たドイツ艦隊はソ連砲艦に全速力で突撃。
甲板面より俯角をつけられず、せっかく陸軍から借り受けた”カチューシャ”ロケット砲も
手も届くほどの近距離の相手に浴びせることも出来ないソ連艦隊は
逆にドイツ艦艇が接近して投げ込む機雷攻撃の前になす術なし・・。
見事、ケルチ海峡の制海権を取り戻し、ドイツ軍は補給不足となったソ連軍を
クリミア半島の橋頭堡から追い出すことに成功します。
その後のソ連の猛攻により、クリミアから撤退する第3掃海隊800名が
ブルガリア、ユーゴスラヴィアという既に危険となった国々を陸路横断し、
本国へと向かう最後まで描かれていて、本書のなかでも最も楽しめました。
ちなみにSボート(Schnellboot)は一般的には(本書でも)Eボートと言われますが、
これは特に英仏海峡を巡回していたドイツ艦艇を英海軍が"Enemy boat"と
呼んでいたことに起因しているようです。
ノルマンディ沖に現れた連合軍の大船団に立ち向かうのも、
たった3隻の水雷艇(Torpedoboot)です。
指揮艦T-28を筆頭に英戦艦ウォースパイトめがけて突進しますが、
ウォースパイトは一向に攻撃してくる気配はなし・・。
訝しがる水雷艇の砲術士官に「おかしくって撃てないんだろ」と誰かが一言。。。
このような自暴自棄の悲しいジョークはベルリン攻防戦にも確かありましたね。
路上に築かれたバリケードを突破するのにソ連軍は30分の時間を費やす、というジョークで
「みんなで大笑いするのに25分、戦車で吹き飛ばすのに5分・・」。
やっぱり幽霊船とも言われた補助巡洋艦(仮装巡洋艦)も1章割かれていて
1940年に初めて海洋に乗り出したアトランティスから、「捕虜」にも登場した
コルモラーン、その他初めて聞いた名前のオリオンやコメットなど・・。
この章では夜間戦闘機を搭載した最後の幽霊船、コロネルの1943年の任務が描かれますが、
「帰れなかったドイツ兵」のトール(トオル)の名もチラッと出てきました。
1944年のクールラント・・。ソ連の大攻勢に押されっぱなしで追い詰められたドイツ軍を
プリンツ・オイゲンやアドミラル・シェア、アドミラル・ヒッパーが正確無比な艦砲射撃で援護します。
後にグディニア港では無事に撤退した陸軍兵が海軍兵を見つけては「ありがとう・・」。
陸軍参謀総長グデーリアンがデーニッツに送った海軍に対する感謝の言葉も紹介されています。
まるでドイツ版ダンケルクとでもいうような撤退作戦も
東バルト海の司令官ティール提督を中心に紹介され、
このバルト海を巡る最後の攻防は終戦まで続きます。
もちろんUボート話もいくつか紹介されており、小型Uボートのゼーフントやネガー、
新型Uボートに乗るU-2511のシュネー艦長が終戦に伴い降伏し、
英提督らとの尋問に対して自信満々に答える勇姿まで・・・。
まぁ、肩の凝らない気軽に楽しめるドイツ海軍戦記で、戦艦から仮装巡洋艦、
Uボートに水雷艇の活躍までをありがちな悲惨な終焉ではなく、
逆にユーモアと尊敬を交えて、連合国側とも接した逸話を盛り込んでいます。
また、怪しい・・と思っていま、調べてみたところ、著者のC.D.ベッカーは
やはり「呪われた海」の著者であるカーユス・ベッカーのようですね。
300ページの本書は、初めてドイツ海軍モノを読んでみようという方や、
パウル・カレルような戦記がお好きな方にも、息抜きがてらにオススメできる一冊です。
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