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KGBマル秘調書 -ヒトラー最期の真実- [ナチ/ヒトラー]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

20世紀の人物シリーズ編集委員会(編)の「KGBマル秘調書」を読破しました。

本書は以前から知っていましたが、このタイトル・・KGBとヒトラーというのは
時代が合わないことから、自分のなかでは繋がらず、
「なんのこっちゃ?」的な扱いにしていました。
しかし先日の「ヒトラー・コード」のコメントを頂きまして、そんな内容だったの・・
ということで、早速、購入、そして、ほぼ一気読みしました。

とにかく世の中には「ヒトラーのほにゃらら」とか「ヒトラーとフニャンフニャン」
とかいうタイトルの付いた本が氾濫しています。
たいがいが名前負けしている感じで、「とりあえずタイトルにヒトラー入れとけ」
といった安易な戦略と疑ってかかってます。

KGBマル秘調書.JPG

本書の成り立ちを説明すると、2000年にモスクワの出版社で発刊された、
20世紀の人物シリーズの「ヒトラー 最後のあがきと死」の翻訳で、
ソ連の崩壊によりKGB(当時のFSB)機密資料が公開されたことで
それらの資料を編集したものです。

4部構成から成る本書は、それぞれ掲載されている資料の位置づけが違い、
これは読み進むにつれ、徐々に興味深くなってくるという、
翻訳版の構成変更の妙もあって、そこがいわゆる「雨の休日の一気読み」へと
まんまと繋がっていくのでした。

第1部「噂と推測」はロイター通信やソ連国営のタス通信などを中心とした、
終戦直後のマスコミ情報を紹介しています。
西側の捕虜となったヒトラー専属運転手のケンプカが記者たちのインタビューに
「エヴァ・ブラウンの遺体を運び出したのは自分だ」と語った話や、
ヒトラーがアルゼンチンへ逃亡・・・とか、
ヒトラーの息子を保護・・・といった有名な噂が満載です。
これは終戦当時、ヒトラーの死についての肯定と否定が、
結構しつこく世界各国のマスコミを賑わせていたかがわかりました。

Erich Kempka 1937.jpg

第2部「機密文書で明らかになった新事実」は
ヒトラーとエヴァ・ブラウン、ゲッベルス一家の焼死体を検死し、
彼らの側近、または歯科医などによる身元確認調書が紹介されています。

他にも、スターリンへのジューコフの特別報告やNKVD長官ベリヤへの報告など、
日付を含め、完全な報告書形式そのままで掲載されているため
生々しくて、結構ドキドキしますね。
また、ゲッベルスの焼死体写真やヒトラーの歯などの写真もあり、
特にこれらは、巻頭のカラー写真でも掲載されています。

Wilhelm Keitel,  Hermann Göring, and Martin Bormann.JPG

第3部は個人的に最も印象的だった「日記、供述書、調書」です。
1945年1月1日~5月1日に書かれたボルマンの日記は
大体は「誰々と会った」というシンプルなものですが、
しょっちゅうヘルマン・フェーゲラインとサウナ行っている感じです。
以前に読んだ、フェーゲラインがヒムラーからボルマンに寄って行った
という話を思い出しました。

「ヒトラー・コード」で最も多くを語った副官オットー・ギュンシェの調書や、
ハンナ・ライチュの米軍の調書を分析したものも出てきます。

Johann Rattenhuber.jpg

ラッテンフーバーSS大将の供述記録は特に注意しながら読みました。
これは彼が1933年からRSD(本書では「ヒトラー専属護衛隊」)の隊長として、
12年間もヒトラーに従えていたことと、
このRSD組織が今ひとつ良くわからなかったことによるものです。

Wilhelm Mohnke&Dog.jpg

この辺り、モーンケヴァイトリンクという、ベルリンを死守した司令官2人という
ビックリする供述が続き、更にはシェルナー元帥の供述と
そのすっかり痩せた、別人のような捕虜の写真は特別印象的でした。

Ferdinand Schörner8.jpg

彼らからはヒトラーの健康状態を聴取するのも大きな観点だったようで、
専属医師のモレルについての証言が度々出てきます。
総じて怪しい薬を処方するヤブ医者というのが全員の評価です。
そういえばヒトラーの秘書だったユンゲ嬢もモレルのことを結構書いてましたね。

Dr. Theodor Morell.jpg

第4部は1970のKGB極秘作戦です。
これは1970年にドイツに移管されることになった東ドイツのソ連軍駐屯地に
1946年にヒトラーらの遺体を埋葬していたことによるKGB秘密工作で、
これらの遺体を発掘、そして焼却処分にして・・という展開です。

第1部と第2部はある程度、知っていたことですが、
第4部はまったく知りませんでした。
しかし個人的に、第3部は凄かったですね~・・。
モーンケの供述書が出てきた辺りからは、「次は誰だ?」と久しぶりに興奮・・。
ちょっと先のページをめくってみたり、目次を読めばわかることですが、
こういうことを意味なく、ガマンしてしまう性格だったりします。
決して「M」じゃあないですよ。楽しみを先に取って置くタイプなんです。。。



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グライフ

ご無沙汰してます、この本、調書形式の内容が興味深いですよね。
ヒトラー含め最高司令部の戦争中の様子は
「ヒトラーの戦い」児島襄文庫版10巻が参考になります
、モレルの治療についてもよく出てきますがヒドイです、
でもヒトラーは信頼してるんですよねぇ。不思議。
by グライフ (2010-04-14 18:44) 

ヴィトゲンシュタイン

こんばんわ。
本書を教えていただいたグライフさんに、まず感謝です。

「ヒトラーの戦い」児島襄は、そのうちに・・と以前から思っていますが、
まず、本棚で待ち侘びているアーヴィング「ヒトラーの戦争」、
トーランド「アドルフ・ヒトラー」、フェスト「ヒトラー」とありますので、
このペースだと、来年ですかね~。
しかし、10巻のレビューはどう書いたら良いんでしょうね?
1巻づつのレビューになるか、独破するまで1ヶ月程度、このブログを
お休みさせていただくか・・・。

モレルは今まで読んだ本で良く書かれていたためしはありませんね。
酷い言われようでは、カイテルに匹敵するでしょう・・。
by ヴィトゲンシュタイン (2010-04-15 20:16) 

コメコン

お久しぶりであります!

いやぁ、レビュー読ませて頂いたら此の本もかなり気になってきましたー
そしてグライフさんの言われる「ヒトラーの戦い」児島襄も気になります。

ところで、
私は読書のスピードが大変に遅くて1冊読むのにひどく時間がかかってしまいます...
まるで列車砲のようです・・・
読みたい本を読み残しては死ねないです。
ヴィトゲンシュタインさんは読まれるのがお早いですね。
たくさん読めばだんだん早くなるものでしょうか?

毎回、部隊名の羅列と格闘するコメコンでした。ではまた!
by コメコン (2010-04-16 11:52) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も。コメコンさん。

自分自身ではそれほど独破スピードは速くないと思っています。
基本的には片道1時間の通勤電車の中、本書のように休日に自宅で
疲れるまで・・。という、毎日です。

確かに聞いたことのある人物やら部隊名やらが出てくると中断して調べたくもなりますが、出先では無理ですし、せっかくの集中しているペースを乱すのもイヤなので、気になるページにはスーパーやコンビニの「レシート」を挟んでおいて(「しおり」は硬すぎてダメ・・)、読了後に読み返しながら調べる、といった感じです。

「コメコン」をクリックしたら、すごいページが出てきてビックリしました。
早速「お気に入り」に追加させて戴きました。
by ヴィトゲンシュタイン (2010-04-17 09:40) 

グライフ

私は、ある本読んでいて「アレこれは確かどこぞの本に書いて
あったな。ココに出てきた人物の書いた本あったよな。」と手を広げて
周りは本の山ができるという読み方なんですよ。
自分なりに楽しんで読めばいいのではないでしょうかね。
児島襄「ヒトラーの戦い」は各国の公刊戦史、当事者の回想録をベースに
書かれているので、ご存知の事が多いと思いますが、いまでは入手困難
なモノもありますので、総括的な副読本として読んだほうがいいですね。
その元ネタ本が欲しくなるのがこまりものなのですが、、orz

by グライフ (2010-04-17 18:01) 

ヴィトゲンシュタイン

>当事者の回想録をベースに
というのは、また気になりますね・・当事者・・。

先日、独破リストにも書きましたが、現在、本棚から溢れつつありまして、
そんなときに大日本絵画の読みたかった本が安く出ていたのもあり、
ちょっと大人買いしてしまいました。
スペースがあれば、文庫じゃない単行本のほうの全15巻を買った方が安いのかも知れませんね。う~ん、悩ましい・・。

ちなみに、コメコンさんへのコメント書いていた勢いで、独破リストも更新しました。「出先で読む」の話の続きです。
by ヴィトゲンシュタイン (2010-04-17 21:18) 

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