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スタリングラートの医師 -補虜収容所5110‐47- [戦争映画の本]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

H.G.コンザリク著の「スタリングラートの医師」を読破しました。

コンザリクは、この独破戦線でも過去2作、
第6軍の心臓」と「極限に生きる」を紹介していますが
そのコンザリクの独ソ戦3部作の最高傑作との呼び声高い一冊です。
「スタリングラート」なのか「スターリングラード」なのかは微妙なとこですね。
ロシア読みとドイツ読みの違いかも知れませんが、
レーニンの名を掲げた「レニングラード」も「レーニングラード」とは書かないですしね。。


スタリングラートの医師.JPG

前の2作が確かに戦時中の話だったのとは違い、
本作は戦後のスターリングラード近郊の収容所が舞台となっています。
しかしこの3部作は主人公が医師であるのが共通しています。

ストーリーは補虜収容所内のドイツ人病棟を任された軍医大尉のベーラーを中心に
部下である気性の激しい軍医中尉や純粋な軍医見習いの恋愛模様、そして
彼らの素晴らしい人間性に徐々にロシア人たちも共感を抱いていくといったものです。

THE DOCTOR OF STALINGRAD2.jpg

ただコンザリクは独ソ戦とはいっても、血も涙もない戦闘シーンがウリではなく
医師の目線から、その過酷な運命を受け入れ、
生きてゆく様々な人々の心情を描くのが真骨頂ですから、
本書が最高と言われる理由はよくわかります。

「極限に生きる」も映画化されているようですが、本作は日本でもDVDで
「スターリングラードからの医者」のタイトルで発売されていました。

DER ARZT VON STALINGRAD.jpg

原作は多種多様な登場人物と、まったく違う形の2つの恋愛が
大きなウエイトを占めていますが、
さすがにこの109分の映画ではコンパクトにまとめられています。
特に原作の主役の1人、若き誠実な軍医見習いのシュルタイスと
彼が介護するザーリャとの痛々しいほどの純愛が出てこないのはちょっと残念でした。。

その代わり、若いドイツ人捕虜の病人とロシア軍曹の看護婦との純愛となっています。
それにしても、この看護婦さん、ジェニファー・コネリーそっくりです。

また、軍医中尉ゼルノヴと収容所の女医アレクサンドラの恋の行方も
原作とは大きく変わっていますが、
この色情狂の乱れっぷりはさすがに当時の映画では描けないでしょうね。

Eva Bartok.jpg

しかしアレクサンドラを演じるエヴァ・バートックは、なかなかイメージどおりです。
そしてハンネス・メッセマーが収容所看守長の悪役マルコフを演じています。
このメッセマーという役者さんは、あの「大脱走」の収容所所長を演じた方です!
今回はロシア人役なので、観ていてちょっと混乱してしまいました。
「大脱走」のドイツ軍人というイメージしかないですからねぇ。

The-doctor-of-Stalingrad-2.png

その他、原作ではザイトリッツ=クルツバッハ
NKFD「ドイツ自由国民委員会」の将校が登場するのは印象的でした。
ソ連側よって反ナチ運動を行った彼らは、ドイツ人捕虜から裏切り者として扱われますが、
その彼らの複雑な立場と心境も見事に描いています。

Generál von Seydlitz.jpg

なにか映画の話とごったまぜになってしまいましたが、原作のほうが数倍面白く、
非常にドラマティックで読み応えのある印象的な一冊で
中盤以降は一気読みしてしまいました。
特に読み手の年齢によって主人公のドイツ人医師3人の誰かには
感情移入できるのではないでしょうか?

それでも、この3部作にあえて個人的に順位をつけるとすれば・・・
1位「極限に生きる」ということになりますかね。
これはストーリーと舞台が好きなシチュエーションかどうかだけの問題なので、
小説としての出来は?と問われたら
「スタリングラートの医師」と答えてしまうかも知れません。





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コメコン

どうも!
「砂漠の戦争」を堪能した後、こちら読破しました。
三部作の中で一番つまらなそーだなーと思って最後に読んだのですが、
これがぶっちぎりで一番面白かったです・・・。
コンザリクお得意の敵味方間での一目惚れ(かつ相思相愛!)という納得のいかないプロットも、
今回の舞台の中では違和感無くヌルっと入ってきて、
私も、中盤以降は先の展開が気になってしまい、アレクサンドラの体をむさぼるように読みました。久々の場外ホームランでした。
次は「死刑執行人との対話」を読みます。
by コメコン (2012-01-11 19:57) 

ヴィトゲンシュタイン

コメコンさん。こんばんわ。
>これがぶっちぎりで一番面白かったです・・・。
そ~でしたかぁ。まぁ、人それぞれですし、ボクも本書は大好きですねぇ。
>中盤以降は先の展開が気になってしまい、アレクサンドラの体をむさぼるように読みました。
笑っちゃいましたけど、そういう風になっちゃいますよね! 。。
ボクのレビューは自分で久しぶりに読んで、ヒドイなぁ・・と思いましたが、なんとかポイントは付いているかな??
できれば映画も観てみてください。本書がより一層、理解できると思います。
>次は「死刑執行人との対話」を読みます。
うーん。コレも人によるとは思いますが、ボクには衝撃的でした。コメコンさんも気に入ってくれれば良いんですけどねぇ。

by ヴィトゲンシュタイン (2012-01-11 20:55) 

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