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大脱走 [戦争映画の本]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

ポール・ブリックヒル著の「大脱走」を読破しました。

戦争映画の金字塔「大脱走」の原作です。
子供の頃から「◎曜洋画劇場」で放映される度に家族で(2週にわたり)鑑賞し、
その後もビデオ録画していたものを眠れぬ夜に何度も(2本にわたり)鑑賞し、
今でも、たまにDVDで鑑賞するという、個人的不動のNo1映画のこの原作は
先日「バルジ大作戦」を読破した後、大昔に読んだことを思い出し、
本棚の奥から発見しました。
どうも読んでいたのは22年前だったようで、内容はまったく憶えていませんでした。

大脱走.JPG

もともと、ドイツ軍に興味を持ったのはこの映画だったことは間違いないでしょう。
”ビッグX”こと、ロジャー・バートレット中隊長が収容所に着いた際、
上官のラムゼー大佐から「ここはドイツ空軍の管轄だから・・・」と説明されると
「大佐は空軍、親衛隊、ゲシュタポと分けて考えておられますが、皆同じ敵です!」
と答えるところや、収容所所長とゲシュタポの微妙な関係などは
子供ながらに不思議に思ったものです。
そして「大脱走マーチ」も映画音楽の金字塔でもありますね。



今回、読みながら思い出してみると、当時スティーヴ・マックィーン演じる
主役のヒルツ大尉のみが架空の人物で、残りは実話である、といったことだったと・・。
本書の著者はいわゆる「見張り役」としてこの大脱走計画に参加していたそうです。
戦前/戦後とジャーナリストだったという経歴もあってか、緻密なノンフィクションで
映画のような軽快な雰囲気はそれほどありません。

the_great_escape.jpg

実際、本書の主役は”ビッグX”です。名前は映画と同じ”ロジャー”ですが、
ロジャー・ブッシェルという30歳の中隊長です。
”ビッグX”を演じたリチャード・アッテンボローが当時40歳ですから、かなり若い印象です。

Roger Bushell vs. Richard Attenborough.jpg

その他の登場人物、映画での役名はほぼ暗記しているものの、実物は全員名前が違いました。
なので、各々のエピソードからこれはジェームズ・コバーンかな?とか、
ここはデヴィッド・マッカラムだな。。とかを想像しながら楽しく読み進めました。
出てくるエピソードは映画と一緒ですが、それを更に細かい描写で解説しているので
脱走計画の様々な苦労が一層伝わってきます。

GoonTower.jpg

ドイツ側の看守たちも個性さまざまで買収できる者、できない者、
人間味のある者、戦争の行く末をどのように考えているかなど
捕虜の彼らは看守ひとりひとりに工作員を付けて情報を引き出す徹底ぶりです。
早い話、ジェームズ・ガーナー演じた「調達屋」のヘンドリーが沢山いるみたいなものです。

tunnel shafts.jpg

この原作のみのエピソードで特に面白かったのは、
とあるドイツ陸軍の将軍がピカピカのベンツに乗って収容所を訪れた際、
群がってくる捕虜たちは、運転手に次々と質問を浴びせかけたスキに
車に乗せてあった書類から工具から、なにからなにまでカッパらってしまいます。
その後、所長から「あの重要書類だけは返して欲しい」と懇願されたことから
しっかりコピーを作成後に「イギリス○○検閲済み」の(偽造)スタンプを押して返却・・。
そして、その「重要書類」の中身は「右腕を失った者は左腕を挙げて敬礼すること」
などという、とても「重要な」事柄が記載されていたそうな・・・。

Johannes Messemer as Von Luger & von Lindeiner-Wildau, Kommandant of Stalag Luft III..JPG

他にも「トンネル」の存在を執拗に疑う看守が「トンネル易者」なる老人を連れてきて
収容所内を「謎の杖」をもって調べさせます。
これにはさしもの”ビッグX”もビックリで
「生きているうちにトンネル易者に会えるとは・・」。

HarrySagan1.jpg

映画で子供の頃から気になっていた看守長のシュトラハヴィッツですが、
実際、グレムニッツという看守がモデルのようです。
この手強い看守長を捕虜たちは「グレムニッツの野郎」と常に呼んでいたそうですが、
「野郎」を付けて呼ぶということは、裏を返せばそれだけ手強い敵(=立派な軍人)
という意味で尊敬の念も持っていたようです。

Harry Riebauer as Strachwitz & Sergeant Major Hermann Glemnitz.GIF

300頁の本書ですが、読破するまで結構時間がかかりました。
おそらく知らす知らずのうちに書かれている内容を頭の中で
映画と照らし合わせていたからなのかも知れません。
映画の「大脱走」とは雰囲気の違う本書ですが、
もし映画版がお好きな方は、一読されても良いんじゃないでしょうか?

ちなみ脱走ものと言えば、以前に紹介した「脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち」が
なんとエド・ハリス、コリン・ファレル主演で映画化です!
そして監督は名匠ピーター・ウィアー!!
「刑事ジョン・ブック/目撃者」や「トゥルーマン・ショー」などで知られる監督ですが、
個人的にはなんと言っても「ピクニックatハンギング・ロック」が最高です。
そういう理由からも、とても良い映画になりそうですね!

wayback6.jpg
wayback2.jpg
wayback5.jpg





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コメント 8

グライフ

こんばんは、琴線にふれる本が続いてます、またお邪魔しました
ご容赦のほど。
「大脱走」映画、小説ともに好きです。
特に映画の私服のゲシュタポが薄っぺらのカバンのふたをスナップ利かせて、クルッて閉める仕草。マネしましたねえ当時。
このおっさんのハイルヒトラーと収容所長のソレの違いに二人の精神がでてますね。
ヒルツ大尉が脱走しては営倉に入れられ、看守兵の鍵くすねて返すところやラストの営倉の中で壁キャッチボールしてるのを看守兵が振り返るシーン
閉じ込められていても心は自由な彼を看守兵は羨ましく思っているようで
印象に残ってます。
脱走ものでいえば、カレル「捕虜」でヴォルガ河畔からドイツまで帰った
ヘルマン ビーラーがスゴイですよね、これも映画になってたと思います。
「イングリシュ ペイシェント」もなかなかです。
by グライフ (2010-01-20 19:55) 

ヴィトゲンシュタイン

毎度ど~も。「大脱走」、特に映画をグライフさんもお好きだったようで嬉しいですね。
この「大脱走」の良さっていうのは、良くある脱走ものと違い、脱走までの過程がメインで、脱走してからはあっという間。主人公はことごとく捕えられ(或いは処刑され)、ある意味アンハッピーエンドでもあるところでしょうか?
本書でも出てきた「コルディッツ収容所」も本が出ていたので、早速、購入しました。
ヘルマン ビーラーの映画はちょっと知りませんでしたが、「イングリッシュ・ペイシェント」はロードショー行きましたね~。「シンドラーのリスト」で極悪な強制収容所所長で印象的だったレイフ・ファインズ、良い役者です。。
まぁ、でもカレルの「捕虜」を近々に読み直したくなりました。

by ヴィトゲンシュタイン (2010-01-20 21:09) 

IZM

はじめまして。
このDVD買おうと思っていたので、私にとってはタイムリーな記事でした。テーマ曲は、私が小学校1年の時に初めて教わった曲で、今でもよく思い出して弾いている曲で、こたらのMIDI?、繰り返し聞いてしまいました。名曲ですね。

by IZM (2010-02-20 19:40) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も。IZMさん。はじめまして。
このブログ・・本当は「本」のブログなんですけど、
やっぱり「映画」好きなのも思いっきり伝わっちゃってますかねぇ?
個人的にも映画ネタ多いなぁ・・と反省しているところです。
でも、この「大脱走」のDVDを気に入ってもらえたら最高ですね。
もし、万が一にでも気に入らなかったら、全額返金します!!!

by ヴィトゲンシュタイン (2010-02-20 21:15) 

IZM

ヴィトゲンシュタイン様。
レスありがとうございます。本のレビューも、とっても面白いです。映画ネタもぜひぜひやってください。
そして、DVD観ましたー!実は昔一度観て、子供心にラストにグッと来たものでしたが、今回はそのラストで泣いてしまいました。。。。年を取ると、涙もろくなって・・・
改めて、こちらのレビューを読むと、原作も読みたくなりますね。古書しかないようですが、機会があったらぜひ読んでみたいです。そうそう、映画を観ながら、「実際の兵隊はもっと若い人が多かったろうな」とは思いました。
あと、やっぱりこの音楽がすごい・・・・・最初っからやられっぱなしでした。


by IZM (2010-05-09 19:08) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も。映画「大脱走」気に入っていただけたようで、嬉しいです。
自分もまた観たくなりました。
IZMさんのブログも拝見しました。ドイツにお住まいなんですねぇ。

ダニーとセジウィックは我が兄弟のなかでも一番人気でした。
これは同じようにTVでよくやってた「荒野の七人」でブロンソンが子供から慕われる役をやってたからかも知れません(コバーンのナイフ投げもブルース・リーに匹敵するほどの格好良さでした)。
それと強いトンネル王が見せる閉所暗所恐怖症の弱さは、押入れが怖かった子供の共感を呼んだのかも・・。
その後もブロンソンのCM「う~ん・・マンダム」やコバーンの「スピーク・ラーク」はみんなでマネしたもんです・・。
もちろん、色気づいた中高生の頃にはマンダムのヘア・リキッドとラークが愛用品になりました。。。


by ヴィトゲンシュタイン (2010-05-09 21:33) 

金魚虫

この映画で面白い場面として、ヘンドリーがトラックを物色している所にヴェルナーが注意する場面で、(何してる!)との問いに、(道具泥棒)と答えて、ウェルナーが(道具泥棒は独房行きだ)と言った後のヘンドリーとのやり取りが間抜けで面白いです。ヴェルナーの
(君はアメリカ兵だね)の後のヘンドリーの(きみはドイツ兵だね)
 (もちろん!)と答えるすきだらけのヴェルナーさんが好きです。
ヘンドリーのコーヒーの誘いの言葉に反応する表情、l財布捜索の引き換えとしてのカメラの要求に対しての何ともいえない表情もかわいいですね。

by 金魚虫 (2010-10-10 03:03) 

ヴィトゲンシュタイン

ど~も。金魚虫さん。
ヴェルナー・ファンですかぁ。。
確かに彼の存在が収容所ドイツ軍と捕虜たちの関係をギスギスしたものにせず、映画として和やかなものにしていますよね。
それでもヴェルナーが「熱ぃ!」とか言って、沸かしたお湯をこぼしてしまったことで、トンネルが発見されたり・・と、自分が子供の頃は、
この間抜けっぷりに腹が立った記憶があります。。。
by ヴィトゲンシュタイン (2010-10-10 09:41) 

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