彼らは来た -ノルマンディー侵攻作戦- [戦記]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
パウル・カレル著の「彼らは来た」を再度読破しました。
シンプルで格好良いタイトルです。
まるで宇宙人侵略ものの古いSF映画みたいです。
が、もちろんそんな訳ありませんね。。説明するまでもなく「彼ら」とは西側連合軍です。
この「ノルマンディ上陸作戦」、連合軍の作戦名「オーヴァーロード作戦」を描いたものは、
映画でも「史上最大の作戦」や「プライベート・ライアン」などがありますが、
本書はまったく別の視点、もちろんドイツ軍側から描いたものです。

先日「ノルマンディのロンメル」を読破して、なにかノルマンディものを・・と思い、
その未読の「史上最大の作戦」でもと考えましたが、
結構前に読んで内容を忘れかけていた本書を再読することにしました。
ホント、カレルはたまに読みたくなりますね。
前半から楽しめます。上陸して来たアメリカ軍に対し、「最後の手段だ!」として
90kgものダイナマイトを搭載したミニ戦車「ゴリアテ」を投入しますが、
あえなく全車、浜辺で立ち往生してしまいます。
しかし、その後、この謎のゴリアテを見つけて遊びだしたGIたちは
手榴弾を投げつけるなどしたため、見事ゴリアテは周辺のGIたちを道連れに
大爆発を起こしたのでした・・。

また、トーチカで守られたマルクフ海岸砲台の210mm砲も大活躍しています。
アメリカの戦艦対ドイツの海岸砲の戦記というのは非常に珍しいですね。
アメリカ艦隊のキング提督も「マルクフの砲兵には悩まされた」と報告しています。

この戦記、全般を通しての主役はフリッツ・ヴィットとクルト・マイヤー率いる、
第12SS装甲師団ヒトラー・ユーゲントとバイエルライン率いる戦車教導師団です。
大激戦区となったカーンでの戦い、そして連合軍のヤーボと艦砲射撃の前に
この最も装備の整った、西方で最強の師団が壊滅していくさまがドラマチックに語られます。

↑ の有名な写真が大好きです。
第18歩兵連隊の名誉連隊長の襟章を着用したルントシュテットが「ん?どれどれ・・」
さすがの”パンツァー”マイヤーも腰を低くして「元帥閣下。こちらで御座います」
その後ろで、まったく見ていられないヴィットが「おいおい、クルト頼むよ・・」 (勝手な妄想です)
そしてヴィットマンのヴィレル・ボカージュの戦いもかなり詳細に書かれているのには
驚きました。1960年という古い本なんですけどね。。。
「バルバロッサ作戦」や「砂漠のキツネ」と違い、この戦記は最初から最後まで
ドイツ軍は「やられっぱなし」という状況のなかで、ヴィレル・ボカージュとは
ほとんど唯一の勝利と言って良いのかも知れませんね。
個人的にはあまり書かれたもののない「シェルブール要塞」の攻防戦、そして
第709歩兵師団長フォン・シェリーベン将軍が降伏する様子が興味深く読めました。

他にもマインドル将軍の第2降下猟兵軍団などの戦いっぷりも新鮮で
本書で印象に残った部隊のひとつです。
もちろん、本来の主役級であるルントシュテット、ロンメル、ハウサーといった
メジャーな司令官も登場しますが、本書では脇役扱いで、
それよりも各々の最前線での死闘が物語の中核を成しています。

最終的にはファレーズ包囲戦でドイツ第7軍が大混乱のうちに崩壊し、
連合軍はパリに向かって行くまでが描かれています。

著者パウル・カレルは「バルバロッサ作戦」のコメントで教えていただいた
「バリバリのナチ」だったという話が印象が残っていて、
今回は武装SSに対する記述が変に気になってしまいました。
しかし、出来事を事実として堅苦しく羅列する戦記に比べ、
まるでショートショートのような超短編小説を連続したような語り口は、
飽きたり、眠くなることなく読ませるということを改めて認識しました。
もちろん松谷健二氏の訳の妙も大きいとは思います。
付録の「世界の戦車発達小史」はイラストを使った素敵なオマケで
久しぶりに戦車ものを読みたくなりました。
このオマケは旧版だけかも知れませんが・・。
パウル・カレル著の「彼らは来た」を再度読破しました。
シンプルで格好良いタイトルです。
まるで宇宙人侵略ものの古いSF映画みたいです。
が、もちろんそんな訳ありませんね。。説明するまでもなく「彼ら」とは西側連合軍です。
この「ノルマンディ上陸作戦」、連合軍の作戦名「オーヴァーロード作戦」を描いたものは、
映画でも「史上最大の作戦」や「プライベート・ライアン」などがありますが、
本書はまったく別の視点、もちろんドイツ軍側から描いたものです。
先日「ノルマンディのロンメル」を読破して、なにかノルマンディものを・・と思い、
その未読の「史上最大の作戦」でもと考えましたが、
結構前に読んで内容を忘れかけていた本書を再読することにしました。
ホント、カレルはたまに読みたくなりますね。
前半から楽しめます。上陸して来たアメリカ軍に対し、「最後の手段だ!」として
90kgものダイナマイトを搭載したミニ戦車「ゴリアテ」を投入しますが、
あえなく全車、浜辺で立ち往生してしまいます。
しかし、その後、この謎のゴリアテを見つけて遊びだしたGIたちは
手榴弾を投げつけるなどしたため、見事ゴリアテは周辺のGIたちを道連れに
大爆発を起こしたのでした・・。

また、トーチカで守られたマルクフ海岸砲台の210mm砲も大活躍しています。
アメリカの戦艦対ドイツの海岸砲の戦記というのは非常に珍しいですね。
アメリカ艦隊のキング提督も「マルクフの砲兵には悩まされた」と報告しています。

この戦記、全般を通しての主役はフリッツ・ヴィットとクルト・マイヤー率いる、
第12SS装甲師団ヒトラー・ユーゲントとバイエルライン率いる戦車教導師団です。
大激戦区となったカーンでの戦い、そして連合軍のヤーボと艦砲射撃の前に
この最も装備の整った、西方で最強の師団が壊滅していくさまがドラマチックに語られます。

↑ の有名な写真が大好きです。
第18歩兵連隊の名誉連隊長の襟章を着用したルントシュテットが「ん?どれどれ・・」
さすがの”パンツァー”マイヤーも腰を低くして「元帥閣下。こちらで御座います」
その後ろで、まったく見ていられないヴィットが「おいおい、クルト頼むよ・・」 (勝手な妄想です)
そしてヴィットマンのヴィレル・ボカージュの戦いもかなり詳細に書かれているのには
驚きました。1960年という古い本なんですけどね。。。
「バルバロッサ作戦」や「砂漠のキツネ」と違い、この戦記は最初から最後まで
ドイツ軍は「やられっぱなし」という状況のなかで、ヴィレル・ボカージュとは
ほとんど唯一の勝利と言って良いのかも知れませんね。
個人的にはあまり書かれたもののない「シェルブール要塞」の攻防戦、そして
第709歩兵師団長フォン・シェリーベン将軍が降伏する様子が興味深く読めました。

他にもマインドル将軍の第2降下猟兵軍団などの戦いっぷりも新鮮で
本書で印象に残った部隊のひとつです。
もちろん、本来の主役級であるルントシュテット、ロンメル、ハウサーといった
メジャーな司令官も登場しますが、本書では脇役扱いで、
それよりも各々の最前線での死闘が物語の中核を成しています。
最終的にはファレーズ包囲戦でドイツ第7軍が大混乱のうちに崩壊し、
連合軍はパリに向かって行くまでが描かれています。

著者パウル・カレルは「バルバロッサ作戦」のコメントで教えていただいた
「バリバリのナチ」だったという話が印象が残っていて、
今回は武装SSに対する記述が変に気になってしまいました。
しかし、出来事を事実として堅苦しく羅列する戦記に比べ、
まるでショートショートのような超短編小説を連続したような語り口は、
飽きたり、眠くなることなく読ませるということを改めて認識しました。
もちろん松谷健二氏の訳の妙も大きいとは思います。
付録の「世界の戦車発達小史」はイラストを使った素敵なオマケで
久しぶりに戦車ものを読みたくなりました。
このオマケは旧版だけかも知れませんが・・。
こんばんは、カレルときてはお邪魔しないわけには、
とまた来てしまいました。
私もカレル作品は同じテーマの他の本を読む際には
併読してますね。この場面こうだったんだぁ、、みたいに。
ところで中公版「彼らは来た」内容が追加、訂正されてるところが
かなりあって、連合軍の欺瞞作戦や、オマハビーチの戦闘
ドイツ情報部の虚偽報告,その他細かい加筆があり、古本で
安ければお求めになってもよろしいかと思います。
ヴィットマンの戦闘については
「ヴィレル‐ボカージュ―ノルマンディ戦場写真集」大日本絵画
が詳しいですよ。それでもまだ完全に解明されない謎は残ってますが。
by グライフ (2010-01-17 17:41)
ど~も。こんばんわ。
いつも貴重でマニアックな情報教えていただき、ありがとうございます。
今度、読み返したくなった時には「中公版」買ってみます。
「ヴィレル‐ボカージュ」も買おうか悩んでいたんで、完全に背中押されている感じですね。
でも、今でも買うのと読むのとが良い勝負で、まだ未読の本が40冊くらい本棚で順番待ちしています。。。
だいたい読む順番は8冊程度決めてるんですが、こうやってカレルなんかを再読したりしてるので、なかなか予定通り消化できません・・。
でも「モンティ回想録」は近々いきますよ。パットンも出てきそうですしね!
by ヴィトゲンシュタイン (2010-01-17 19:48)
お気に入りのタイトルにケチつけて申し訳なんですが、最近この「彼らは来た」は誤題(?)じゃないかと思ってます。とゆーのは原題のSIE KOMMENを英語に直すと”THEY COME”で軍隊用語に更に直すと「敵艦見ゆ」になるワケです。ついでにこのTHEY COMEはイギリス海軍用語でもあります。
更に付け加えるとどーでもいいハナシなんで忘れてください。
by アナベル・加トー少佐 (2010-01-30 02:42)
こんにちは!
以前から中央公論版は持っていたのですが、
フジ出版社お得意の巻末付録があるとのことで、今回フジ版を買い足しました。
するとグライフさんのコメントで、
中央公論版は加筆訂正されてることを思い出し、
中央公論版も手放さないな、と思った次第です。
巻頭の写真も中央公論版の方が解像度が高いですね。
当時よりも多少知識が付いたので久々に読み返すのが楽しみであります!
by コメコン (2010-03-12 10:55)
こんばんは!ヴィトゲンシュタインです。
こんなレビューでコメコンさんにお金使わせてしまって、責任感じます。。。
自分は今のところ、外出先(移動中?)で読むことが多いので、文庫になっていれば文庫、そして、綺麗で安い方が良いので、新版という買い方をしています。
でも逆にグライフさん情報も含め、旧版/新版での違いっていうのも良いもんだと感じました。
そういった意味ではリデル・ハートの「第二次世界大戦」を中公版/フジ版のどっちで買おうか半年悩んでいます。古書価格も同じなんですよねぇ。
by ヴィトゲンシュタイン (2010-03-12 20:12)
>こんなレビューでコメコンさんにお金使わせてしまって、責任感じます。。。
なにをおっしゃいますか!
自ら望んで買い足して、満足しておりますのでどうかご安心ください。
>リデル・ハートの「第二次世界大戦」
なにげに中公版にもフジ版の別冊付録内容が収録されているようなので、
状態次第では中公版もアリ、ですよね。
私は「失われた勝利」は中公版を買おうかな、と思っておる所です。
ではでは。
by コメコン (2010-03-13 09:20)