10年と20日間 -デーニッツ回想録- [回想録]
ど~も。ヴィトゲンシュタインです。
カール・デーニッツ著の「10年と20日間」をやっと読破しました。
1935年の潜水艦隊司令就任から1945年にヒトラーの後継者として
連合軍に降伏するまでの10年間を自ら綴った有名な回想録です。
これ以前の回想は「ドイツ海軍魂」に記されています。
1年ほど前に3000円という安い!値段で購入しましたが、なかなか集中して読む時間が取れず、
今回の夏休みに気合を入れて2日間で読破できました。
さすがにUボート戦の大家である教授の授業を受けているような感じで、
丁寧に読み進めましたが、終始一貫した印象をまず2つ挙げたいと思います。
ひとつめは、Uボート部隊の指令として、その最初から最後まで職務を全うしたこと。
これは即ち、この回想録が第2次大戦のUボートの全てを網羅しているということです。
このヒトラー政権において、これだけの地位の軍人がその間、一度も解任されなかった
というのは稀なことであり、デーニッツ以外にはちょっと思い当たりません。
ふたつめとして、とにかく自身とドイツ海軍の敵は英国(と米国)であって
それは大西洋における通商破壊戦によってのみ勝機があり、
東部戦線や北アフリカ戦線などは邪魔くさい、というかあちらの戦況のために
せっかくのUボートを割かねばならない、または建造がままならない
という苛立ちが、全編を通してひしひしと伝わってきます。
全23章から成る本書は当然ほとんどがUボート戦について語られ、前半では
スカパフローの牡牛ことギュンター・プリーンについて、その人間性も評価し、
クレッチマーをも含む大エースたちが撃沈され、Uボート戦が変化していく様子、
戦艦ビスマルクや仮装巡洋艦アトランティス撃沈に伴う、Uボート部隊の裏話。
アメリカ沿岸でのパウケンシュラーク作戦についても1章書かれています。
特に印象に残ったのは「ラコニア号事件」の章で、U-156によって撃沈された
英国客船ラコニア号の生存者を救助しはじめたUボート部隊がアメリカ機の爆撃を受け、
この事件よって「今後、生存者の救助すべからず」命令が発せられた顛末が書かれています。
ハルテンシュタイン艦長のU-156はこのとき、多数のイタリア人捕虜を含む英国人など
260名!を救助/収容したということですが、なるほど、とても騎士十字章を拝領する
Uボート艦長らしからぬ、とても人のよさそうな顔をしています。内藤大助そっくりですね・・。
西部方面海軍司令部が陸軍の指揮下にあったという話も興味深く、
沿岸防衛について責任者であったロンメルと海軍司令長官のクランケ提督は
海岸砲台を構築し、直接砲撃するということで意見は一致していたものの、
結局はルントシュテットと総司令部案の間接砲撃をヒトラーは承認したとあります。
このノルマンディにおけるUボートの戦いも詳しい話は初めて知りました。
ヒトラーとの関係も客観的に語っている印象で、海軍の作戦/戦術については
ほとんど干渉されたことがなく、「陸のヒトラー」からは信頼されていたとし、
また、ヒトラー暗殺未遂事件にも触れ、短いながらも1章を割き、自身の見解を述べています。
そして、自殺を選ぶヒトラーから後継者に任命されると国防軍最高司令部長官のカイテルを解任し
隠居生活だったフォン・マンシュタインを後任に据えようとしたということです。
結局、終戦間際のゴタゴタのなかで所在がわからず・・だったようですが、
しかし、いくらマンシュタインでも、この時期では結果的にはなにも変わらなかったでしょう。
最後の章では終戦の数日後に事故死した、ヴォルフガンク・リュートについて語り、
最も優秀なUボート艦長の一人として、
その棺に別れを告げる光景は象徴的であったと結んでいます。
そこには戦死した全てのUボート戦士が納められているという思いもあったのでしょうか・・。
カール・デーニッツ著の「10年と20日間」をやっと読破しました。
1935年の潜水艦隊司令就任から1945年にヒトラーの後継者として
連合軍に降伏するまでの10年間を自ら綴った有名な回想録です。
これ以前の回想は「ドイツ海軍魂」に記されています。
1年ほど前に3000円という安い!値段で購入しましたが、なかなか集中して読む時間が取れず、
今回の夏休みに気合を入れて2日間で読破できました。
さすがにUボート戦の大家である教授の授業を受けているような感じで、
丁寧に読み進めましたが、終始一貫した印象をまず2つ挙げたいと思います。
ひとつめは、Uボート部隊の指令として、その最初から最後まで職務を全うしたこと。
これは即ち、この回想録が第2次大戦のUボートの全てを網羅しているということです。
このヒトラー政権において、これだけの地位の軍人がその間、一度も解任されなかった
というのは稀なことであり、デーニッツ以外にはちょっと思い当たりません。
ふたつめとして、とにかく自身とドイツ海軍の敵は英国(と米国)であって
それは大西洋における通商破壊戦によってのみ勝機があり、
東部戦線や北アフリカ戦線などは邪魔くさい、というかあちらの戦況のために
せっかくのUボートを割かねばならない、または建造がままならない
という苛立ちが、全編を通してひしひしと伝わってきます。
全23章から成る本書は当然ほとんどがUボート戦について語られ、前半では
スカパフローの牡牛ことギュンター・プリーンについて、その人間性も評価し、
クレッチマーをも含む大エースたちが撃沈され、Uボート戦が変化していく様子、
戦艦ビスマルクや仮装巡洋艦アトランティス撃沈に伴う、Uボート部隊の裏話。
アメリカ沿岸でのパウケンシュラーク作戦についても1章書かれています。
特に印象に残ったのは「ラコニア号事件」の章で、U-156によって撃沈された
英国客船ラコニア号の生存者を救助しはじめたUボート部隊がアメリカ機の爆撃を受け、
この事件よって「今後、生存者の救助すべからず」命令が発せられた顛末が書かれています。
ハルテンシュタイン艦長のU-156はこのとき、多数のイタリア人捕虜を含む英国人など
260名!を救助/収容したということですが、なるほど、とても騎士十字章を拝領する
Uボート艦長らしからぬ、とても人のよさそうな顔をしています。内藤大助そっくりですね・・。
西部方面海軍司令部が陸軍の指揮下にあったという話も興味深く、
沿岸防衛について責任者であったロンメルと海軍司令長官のクランケ提督は
海岸砲台を構築し、直接砲撃するということで意見は一致していたものの、
結局はルントシュテットと総司令部案の間接砲撃をヒトラーは承認したとあります。
このノルマンディにおけるUボートの戦いも詳しい話は初めて知りました。
ヒトラーとの関係も客観的に語っている印象で、海軍の作戦/戦術については
ほとんど干渉されたことがなく、「陸のヒトラー」からは信頼されていたとし、
また、ヒトラー暗殺未遂事件にも触れ、短いながらも1章を割き、自身の見解を述べています。
そして、自殺を選ぶヒトラーから後継者に任命されると国防軍最高司令部長官のカイテルを解任し
隠居生活だったフォン・マンシュタインを後任に据えようとしたということです。
結局、終戦間際のゴタゴタのなかで所在がわからず・・だったようですが、
しかし、いくらマンシュタインでも、この時期では結果的にはなにも変わらなかったでしょう。
最後の章では終戦の数日後に事故死した、ヴォルフガンク・リュートについて語り、
最も優秀なUボート艦長の一人として、
その棺に別れを告げる光景は象徴的であったと結んでいます。
そこには戦死した全てのUボート戦士が納められているという思いもあったのでしょうか・・。
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