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運命の決断 -第2次大戦 インサイド ストーリー- [戦記]

ど~も。ヴィトゲンシュタインです。

S.フライデン W.リチャードソン共著の「運命の決断」を読破しました。

終戦直後、ドイツ軍の高級指揮官たちがアメリカ軍の戦史編纂官に語った陳述記録集です。
ドイツが敗れた有名な戦い6章からなっており、
「バトル・オブ・ブリテン」を当時、第3航空軍首席参謀であった、ヴェルナー・クライペ空軍大将が
「モスクワ」を当時、第4軍(クルーゲ元帥)参謀長であった、ギュンター・ブルーメントリット大将が
「エル・アラメイン」を当時、アフリカ軍団参謀長であった、フリッツ・バイエルライン中将
「スターリングラード」を当時、陸軍参謀総長であった、クルト・ツァイツラー上級大将が
「フランスの戦い」を当時、西部方面軍首席作戦参謀であった、ボド・ツィンメルマン中将が
「アルデンヌ」を当時、第5装甲軍司令官であった、ハッソー・フォン・マントイフェル大将が
自身の経験と当時の資料から敗戦の原因までを率直に語ります。

運命の決断.JPG

ブルーメントリット大将は、バルバロッサ作戦の準備が始まると
ドイツ中の書店からソ連の地図や文献が消え失せ、
これらの本がクルーゲ元帥の机の上に山と積まれていたというエピソードや
南方軍集団司令官のルントシュテット元帥曰く、
「ソ連と戦うなど馬鹿げた事だ。わしには明るい結末など考えることは出来ん。」とし、
やるにしても長期戦を望むべきとの見解だったようです。

Guenther Blumentritt.jpg

ご存知のように、この老元帥は西部方面軍司令官として復帰しますが、
こちらでも沢山の逸話が出てきます。
連合軍の空襲を懸念した参謀たちは、元帥の留守を見計らって防空壕を作りますが、
それを見た元帥は「何物を以ってしても、わしをこの代物に入れることは出来ん」と宣言したとか
連合軍上陸後、電話で元帥から辞意を伝えられた国防軍最高司令部長官のカイテル
今後の対応について意見を求めると「馬鹿者!戦争を終わらせるんだ!」

von Rundstedt.jpg

スターリングラードの運命をめぐる、ヒトラー対陸軍参謀総長ツァイツラー上級大将の死闘は壮絶で
この章だけで充分一冊書けるでしょう。マンシュタインの回想録を彷彿とさせます。
第6軍の即時撤退を必要に求めるツァイツラーに対して
「絶対にボルガは去らんぞ!」と激昂するヒトラー。
そして意見を求められたカイテルは、目を輝かせて「総統閣下!ボルガを去ってはなりません!」
ならばと「空軍による補給で維持は可能」とのゲーリングの発言について、
「国家元帥閣下、毎日どれだけの量の空輸が必要かご存知ですか?」
「わしは、知らん・・」と狼狽するゲーリングをヒトラーの次に第6軍全滅の責任があるとしています。

Kurt_Zeitzler.jpg

フォン・マントイフェル大将のいわゆる「バルジの戦い」も大変興味深く読めます。
主役であるゼップ・ディートリッヒ率いるSS第6装甲軍に対しては、遠回しながらも
ディートリッヒを含め、武装SSに優れた指揮官が不足しているとして、
敗因の一つにしているとも読み取れます。

von Manteuffel.JPG

コンパクトにまとめられた、なかなか勉強になる一冊ですが、残念なことに完訳ではないようです。
古い本でも当事者たちの語る戦記は貴重で、このようなものをもっと出版して欲しいものです。



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